スタディハックVol.14

本日は、GxPグループのエンジニアを中心に、普段の勉強方法仕事をする上で心掛けていることをインタビューする「スタディ・ハック!」第14弾をお届けします!

今回のスタディハックは、
フロントからインフラまでマルチにこなせるGraatのエキスパート、酒巻さんにインタビューしました。

酒巻 瑞穂
Graat アーキテクチャソリューションユニット所属

ソフトウェア関係の学校を卒業した後、人間関係が最も希薄そうで、かつ手に職をつけることが出来る職業をと考え、IT企業へ就職する。Graatに入社する以前は、データベースアドミニストレータ、インフラエンジニア、OS組み込み等、幅広く経験。

GxPグループに入社した理由は?

HTML5やJavaScriptといったWeb標準化技術をエンタープライズ領域で活用することを推進するコミュニティ( https://github.com/html5bizj )にいた頃に、そこのメンバーから「グロースエクスパートナーズなら酒巻さんがやりたいことに近いことが出来ると思うよ」と言われ、興味を持ったことがきっかけです。

当時、エンタープライズの開発に関わるエンジニアは、とにかくブラックで辛いイメージがあって、私もその”辛い”開発の渦中にいた一人でした。そういう現状をなんとか打破したくて解決法を検索する内に、同じような悩みを持つ人が集まるオープンソースのコミュニティを発見したんです。そこで色んな人と悩みを共有するうち、「世の中を良くしたい」、「自分に関わる皆を幸せにしたい」といった、ボランティア精神みたいなものが自然と身についていきました。その頃から、標準化技術で、誰もが「辛くない開発」を実現し、それがエンタープライズにも適用できるようになれば、皆が幸せになるのではないかと考えるようになりました。

エンタープライズのウォーターフォール型の開発を払拭して、ストレスなく定時で帰れるような開発スタイルを実現できないかと考えていた頃に、教えてもらったのがグロースエクスパートナーズの存在でした。当時はウォーターフォール型の開発が大半を占めていましたが、グロースエクスパートナーズではエンタープライズ・アジャイル(→Graatのブログ参照)を推進しており、その考え方には強く共感する部分がありました。この会社なら、私がやりたいことを実現できそうだなと思ったので、転職を決めました。

所属するGraatと業務内容について教えてください

私の所属するGraatでは、社会全体が多様性を受け入れながらも効率的である状態・・当社ではそれを「しなやかな社会」と呼んでいますが、そういう社会を作りたいというビジョンがあります。そのためには、社会基盤を担っている企業のシステムを健全に構築する必要があると考えていて、そこが私の哲学とマッチしています。

現在担当しているエンタープライズのチームでも、理想に近い形で開発と運用が実現できていて、ライトウェイトな開発をうまくエンタープライズに適用できているなと感じます。

私の業務内容は、基本的な実装をはじめ、セキュリティや品質チェック、お客様の技術相談に対するエビデンス付き解答やスパイクプロジェクトの提供、ワークショップに参加してチームビルディングについてティーチングを行うなど、様々な形式でサービスを提供しています。

職種としては、テクノロジーリーダーやシニアエンジニアという立ち位置です。私の所属するアーキテクチャソリューションユニットは、チームで成果を出すというより、各自決められた領域でミッションを果たすエキスパートが多いですね。

得意分野は?

Web技術です。
すべてがオープンマインドで、調べるのも参加するのも論議するのも簡単にできます。
調べれば元となる情報だけではなく、なぜそうなったかの議事録や歴史的登場背景、発案者やその考えまで事細かに知ることができます。世の中の流行として必要となったものを「標準化するためにはどうすべきか」という括りで論議されていることが多いので、下手な情報源よりも体系的にテクノロジーを理解する土台にもなり、疑問や不明点があれば実際に関係者に聞くこともできるのが良い点です。

社会人になってから非標準化技術にかなり苦しめられた経験があるので、ソースを読んでも上手くいかないブラックボックス化した状態がとにかく嫌で、最適化を考えたり計画をたてたり、オープンスタンダードが好きです。Web技術について考えを巡らせることが、もはや趣味になっていますね(笑)。

普段は同じような考え方を持つメンバーが集まるコミュニティに参加して、知見を深めています。
MoZillaのコミュニティには5~6年くらい所属しており、その他にもWEBの歴史を残す文化活動や海外の品質工学コミュニティにも所属しています。日本のコミュニティにはあまり参加してないですね。

昔は海外の方とチャットやZOOMをする時に変なことを言ってないか心配でしたが、意外と伝わることが分かってからは、コミュニケーションも苦手意識はなくなりました。

働くスタンスは?

graat酒巻
仕事のスタンスは「宵越しのチケットを持たない」ですね。
発生したタスクとチケットは可能な限り発生した瞬間に消化します。残業や時間外勤務については、定時直前や定時後などに新しいタスクが発生しない限り、基本はしません。
ただ、お客様には海外から問い合わせてくる方もいるので、その場合は時間外で対応したりもします。
ヨネ
こういったスタンスになったのは社会人になってからですか?それとも元々の気質ですか?
graat酒巻
子どもの頃から、目の前のタスクはすぐ消化したい性質で、障害になりそうなものは早く排除したいと考える方でしたね。夏休みの宿題も、夏休みがはじまる前からやっていました。親が計画的だったので、その影響も大きいです。小さいタスクはすぐやって、大きいタスクは分割して小さくしてからすぐやって、そういう習慣が自然と身についていたと思います。

普段の勉強法は?

graat酒巻
自主的に勉強はしません。
近い行動として、コミュニティで誘われたり、心惹かれたりしたものに出会った時は、積極的に貢献はします。元々勉強は嫌いで、必要最低限のことだけをやる方なので、使うかどうかも分からないものを学ぶのは嫌ですね。私の”勉強”の定義は、自分で再現・証明できるレベルになることなので、ちょっとやってみようかなと手を出すということはないです。学ぶ動機付けはコンセプトに共感できるかどうかで、世の中の課題に対して真剣に解決しようとしている技術については、深く学びたいと思います。

そういった技術を狭く・深く学んでいくと、結局は根本的な思想が同じ他の技術ともつながっていくんですよね。浅く広く学ぶより、結果的にそういった勉強法の方が省エネになります。

新しい技術情報はどうやってキャッチしてますか?

graat酒巻
知り合いとの雑談や会話の中で、新しい考えや面白い話を教えてもらっています。
仕事などで発生した悩みについて、コミュニティーや知人に質問&相談して、深く課題を掘り下げていくうちに、同じ悩みや課題を解決したいと考えている人に出会うことが多く、その人やその周囲のコミュニティーからまた色々と教えてもらったり、相談にのってもらったり。
ヨネ
冒頭の自己紹介で人とのコミュニケーションが苦手だからIT業界を選んだと言ってましたが、そういったコミュニケーションは苦にはなりませんか?
graat酒巻
たしかにコミュニケーションをとることが面倒くさいという理由でこの業界を選びましたが、元々人が嫌いという訳ではないんです。

自分が知りたい要求を満たしたり、課題の解決を考える上で、コミュニケーションをとった方が早く済むのであれば、その労力は苦になりません。同じ悩みを持つ人たちが集まるコミュニティで共有した方が、早く課題解決に至るので。

nrwl/nx ( https://nx.dev/ )にもその関連で参加したコミュニティです。

いま一番はまっている技術や関心事は?

graat酒巻
品質工学です。
まだ素人に毛が生えたレベルですが、現在EU圏のコミュニティであるQE Unitに参加させてもらい、品質工学について学んでいます。
ヨネ
どういったことを学んでいるのですか?
graat酒巻
ざっくり言うと、本番環境に安定したプロダクトを素早くリリースし続けるための技術や学問を学んでいます。QEUnitは、最小限のエネルギーで大規模開発を実現するためのフレームワークを作ろうとしているフランスのコミュニティです。色々な側面の人が集まっているので、非常に勉強になります。
ヨネ
以前、社内でフロントエンドの歴史をざっと紹介するセミナーを酒巻さんが開催してくれましたが、今後エンジニア向けのイベントなどで登壇する予定はありますか?
graat酒巻
今はある程度の知見が溜まらないと発表や寄稿はしていません。20代の頃は自己顕示欲も強くて、コミュニティで発表したりすることもありましたが、世界のコミュニティには登壇や発表をしていなくても恐ろしく優秀な方が沢山いて、そういった方々と実際触れ合ってみて、私は世界が広がりました。その出会いがあったおかげで、解決しなければいけない根本的な課題の世界観も広がったので、今は少し何ができるのかを見つめなおしています。

仕事をする上で心掛けてることは?

graat酒巻
サービスの形やプロダクトにもよりますが、エンタープライズ分野のIT資産を作るのならば、

  • 作って終わりではなく、変化に対応し、作り続けられる体制づくり
  • 可能な限りの数値化と可視化
  • 辛くない開発(辛い開発を辛くない状態にする)

これらの3つを提供できることを何よりも大切にしています。

ヨネ
メンバーに対して心がけていることなどありますか?
graat酒巻
社内でも社外でも、「プロダクトを一緒に作る人」という認識で接していて、なるべく線引きはしないようにしています。ボトルネックは、人間のコミュニケーションなので、あまり壁を作らないように、公私混同しないように。

最後に一緒に働きたい人物像を教えてください。

graat酒巻
ひとりで悩んだりもくもくしたりせず、ささいな疑問や悩みや不満をガンガン言ってくれる人(だだし客観的かつ論理的意見に限る)。
ccヨネ
当社(graat)は、疑問や不満を言える環境だと思いますか?
graat酒巻
私自身がガンガン不平・不満を言うタイプなのですが、言いやすい環境を作ることも必要だと思います。仕事を効率良く進めるためには、円滑なコミュニケーションが必要なので、チームの空気を良くする活動も積極的にやるようにしています。

酒巻さんは知識量がとにかく凄い方というイメージがありましたが、その膨大な知識の根底には、「世の中を良くしたい」という一貫した強い想いがあることが今回のインタビューでよく分かりました。

以前、『リングフィットアドベンチャー』というゲームにはまりすぎて10キロ以上痩せてしまったというエピソードを聞きましたが、そういった部分にも酒巻さんの狭く・深く物事を追求するスタンスが表れていて面白かったです。(その話を聞いてチャレンジしてみましたが、私はすぐ挫折しました・・)

では、次のスタディハックもお楽しみに!
(文:CC室 米山)

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