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品質は現場で守る。J-オイルミルズと選んだ現場主導のシステムづくり 共通化の前に、違いを知る。工場横断プロジェクトのリアル

(写真左から)
株式会社GxP 安場 直史 取締役 Internal Developer Platform室 室長
株式会社J-オイルミルズ 西岡 秀樹 情報システム部アプリケーショングループ兼監査部 マネージャー
株式会社J-オイルミルズ 河田 康弘 静岡事業所 品質管理室長
株式会社J-オイルミルズ 江川 やよい 横浜工場品質管理室
株式会社J-オイルミルズ 増井彩乃 千葉工場品質管理室
株式会社GxP 福家 賢人  Production Management Unit アシスタントマネージャー
株式会社GxP 香取 佑紀  Production Management Unit エンジニア
(※肩書は案件対応時のものです)

株式会社J-オイルミルズ  https://www.j-oil.com/
製油業界の3社が統合して2004年に誕生した、味の素グループの食用油脂メーカーです。
家庭用から業務用まで幅広い油脂製品を展開しています。
全ての生産拠点において品質マネジメントシステム(ISO9001)認証と食品安全マネジメントシステム(ISO22000またはFSSC22000)認証を取得するなど、万全な品質管理体制のもとで製品を製造しています。 

近年の品質管理を取り巻く環境の変化を受け、同社では品質管理の仕組みを見直す取り組みが始まりました。現場主導で進めたシステム構築は、品質管理と組織にどのような変化をもたらしたのか。本記事では、プロジェクトを牽引したJ-オイルミルズの河田氏・西岡氏と、各工場の品質管理担当者、そしてGxPグループのプロジェクトメンバーが語り合いました。

20年越しのシステム課題に向き合う

長年の現場知見を活かしながら、「続けられる品質管理」への挑戦

河田様(J-オイルミルズ):品質管理システムは、安全・安心な製品を提供する上で非常に重要だと認識しています。特に、システムを用いたヒューマンエラー防止は欠かせない要素です。

20年ほど前、それまで使用していた品質管理システムの保守契約終了をきっかけに新たに別の有名パッケージシステムを導入しましたが、結果として現場(工場)の業務負荷が増えてしまい、工場によっては、導入したシステムの利用を中止したところもありました。

重ねて、その後、全国各工場でそれぞれ業務改善をすすめてきたことによる運用方法の違いも工場運営の大きな課題になっていました。

これまでのやり方によって積み重ねてきた知見はあるものの、お客様へ安全・安心な品質の製品を、今後も持続可能な形でお届けし続けるという使命があります。

品質改ざん等リスクへの課題意識や、現行システムを維持し続ける負荷を踏まえ、外部システム導入の要望が現場からも会社からも強くなってきていました。
そこで、品質管理におけるシステムとして、既存パッケージに限定するのではなく、現場の実態に合わせて一緒に作り上げられるパートナーも含めて、検討を進めることにしました。

「使う人が作る」という思想。現場目線から始めたシステム設計

業務理解と現場目線を前提にプロジェクトを進められる環境

西岡(J-オイルミルズ):私自身がシステムベンダー出身ということもあり、技術をしっかり大切にしているベンダーにお願いしたいという思いがありました。GxPの技術力は以前依頼した試験成績報告書の対応で確認できており、引き続きお願いする流れになりました。

河田(J-オイルミルズ):私の思いとしては、情報システム部とベンダーだけでシステムを組み上げることは避けたく、現場主導で、現場が本当に使いやすいものを作りたいという強い希望がありました。

そこで、各工場から品質管理担当を選抜してプロジェクト化し、現実的な要望から「こんなことができたらいい」という内容まで、すべて要望を出す過程で、GxPの皆さんには現場の業務や背景を丁寧に理解いただきながら、必要に応じて現場にも足を運んでいただき、提案を重ねていただきました。

その結果、現場の声を重視したシステムとして形にしていただけたと感じています。

安場(GxP):システムを長く使い続けていただくには、機能を実現するだけでなく、業務そのものを理解した上で設計することが不可欠だと考えています。業務の概念がシステムの構造に正しく反映されていなければ、仕様変更のたびに影響範囲が読めなくなり、保守が難しくなってしまいます。

今回のプロジェクトでは、現場(工場)に何度も足を運びながら実際の油の製造工程や品質の管理方法・内容を知るために丁寧に教えていただきました。そのご協力があってこそ、設計の言葉と業務の言葉を一致させることができたと感じています。

業務を知ることで、お客様と「あの工程の話か」とすぐにイメージを共有できるし、何かを変えたいときも、どこを直せばいいかがすぐに見えてくる。それが現場の方にとって本当に使いやすいシステムにつながると思っています。業務を理解することが、結果的にいちばんの近道だというのが私たちの考え方です。

各現場の違いに徹底的に向き合う ─共通化に向けた「当たり前」に対する課題

業界の常識を超えて、共通言語をつくる

河田(J-オイルミルズ):我々にとって初めてのシステム構築で、最初に「仕様書ではなく画面を見ながら作っていく」と聞いた時は驚きました。何もないところから最終形を想像しながら要望をまとめるのは本当に大変でした。

さらに苦労したのが言葉の壁です。我々が業界の常識として使っている「ロット」という言葉を、安場さん(GxP)に「ロットって何ですか?」と聞かれた時は衝撃でした。「ロットはロットですけど……」と平行線になってしまって。自分たちの常識が常識ではないということを思い知らされましたね。

安場(GxP):私たちも、油がどうやって作られるのかを理解するところから始まりました。どのタイミングでどんな検査をして、どう製品になっていくのか。その流れやロットという言葉の概念をきちんと理解しないと、将来対応できないシステムになってしまう。最初の段階が一番難しかったですね。

香取(GxP):特に印象に残っているのは、油の色を検査する容器の大きさ——「セル長」をシステムにどう落とし込むかという課題です。話を聞いただけでは理解しきれず、実際に工場へ伺って実物を見せていただいて、ようやく腑に落ちました。

西岡(J-オイルミルズ):あれは見ないとわからないですね。

福家(GxP): 工場ごとに設備が異なるためどうしても共通化できない業務も多々ありましたが、現場の方が業務の背景から丁寧に教えてくださったので、実装に落とし込むうえで大変助かりました。
現場責任者がシステム化する業務仕様検討の打ち合わせを適切にコントロールしていただけたこともプロジェクトをスムーズに進められた大きな要因でした。

全工場の要望を集め、標準化を目指す

数十項目の要望から優先順位をつけて実装へ

増井様(J-オイルミルズ):現場の立場なので、ベンダー選定の経緯などは正直よく分からないまま参加しました。ただ、システムを「使う側」としてではなく、「1から一緒に作っていく側」として関わる経験は初めてで、最初は戸惑いもありました。

実際に進めてみると、「こんなことができたらいい」というまだ言語化しきれていない要望でも、きちんと受け止めてもらえることに驚きました。
ぼんやりとした現場感覚を丁寧に整理し、具体的な形に落とし込んでいただいていると感じています。

江川様(J-オイルミルズ):私自身、システムに詳しいわけではなかったので、最初は「どこまでできるのか」「何をお願いしていいのか」も分からない状態でした。その中で、「こうなればいいな」と思っていたイメージが、想像していた以上の形で少しずつ実装されていくプロセスを目の当たりにしました。

現場から出した細かな要望についても、一つひとつ確認しながら反映していただき、現場の声を前提にシステムが作られているという実感があります。「使うことを前提に考えられている」という安心感がありました。

香取(GxP):システムを作るうえで大切なのは技術力だけじゃないということを学ぶことができました。

私たちは、システムの専門家として「技術的に何ができるのか」を提示する立場ではありますが、品質管理の皆様と話しながらシステムを作っていく中で「業務を可能な限り理解する」ことで、要望も正しく把握でき、よりよいものを作ることができるのだと気づくことができました。

持続可能な事業価値の本質となる「現場主導」の力

「システムに合わせる」のではなく、「現場の業務に寄り添う」設計へだからこそ生み出せた変化

―― 現場主導で作ったからこそ得られた学びや価値は何でしょうか。

西岡様(J-オイルミルズ):現場・システム部門・ITパートナーの3者が敬意を持ち、それぞれの役割と責務を果たすことがプロジェクト成功の大きな要素であることを体感できたことが大きいです。現場の業務を真にサポートするシステムは、どの役割が弱くても実現はできなかったと思います。安場さま、福家さまをはじめとするGxPの皆さんには現場の業務に寄り添っていただき、実現したい要望に対して技術力でしっかり答えていただけたことを感謝しております。

福家(GxP):開発者としては非常にありがたい環境でした。現場担当者と密にコミュニケーションを取らせていただいたので、実装方針で悩んだときも「業務としてどうあるべきか」という判断を瞬時にいただくことができました。

システム面においては西岡様が既存システムの仕様やデータ構造を熟知されており、システム的な課題解決もスムーズでした。また、開発者の目線で「どういう状態であれば開発を進めやすいか」を常に考えてくださり、現場との定例設定や工場見学の調整、課題管理ツールの導入など、環境づくりにもご尽力いただきました。

業務・システムの両面で相談しやすい環境があったことが、認識の齟齬を防ぎ、現場の要望をシステムに反映できた要因だったと考えております。

江川様(J-オイルミルズ):横浜工場では、当時のシステムをやめたときからこれまで、古いExcelとAccessを組み合わせた運用を続けており、「このままではいずれ限界が来るのではないか」という不安がありました。
今回の導入によって、データを正しい形で一元管理できるようになり、まず安心感があります。

試験成績報告書も、以前は紙を介した手入力が多く、ミスが起きやすい環境でしたが、現在はシステム上で一貫して管理でき、ミスが起きにくく、お客様にも安心してお出しできるようになりました。

また、検討の過程を通じて工場ごとの違いを整理でき、一部設備上の理由で個別対応が残る部分はあるものの、共通の考え方で品質管理を進められるようになったと感じています。

個人的には、これまで当たり前に続けてきた作業を見直すきっかけにもなり、情報が集約され「ここを見れば必要な情報が把握できる」という状態ができたことで、業務の進め方や意識にも変化が生まれました。

河田様(J-オイルミルズ):これまで「システムがこうだから現場が合わせる」ことが多くストレスがありました。現場のやり方を再現し、負荷やストレスが少ない仕組みのシステムを実現することで、日々の業務を無理なく続けられることはもちろん、品質を安定して維持しながら、改善や見直しにも前向きに取り組める環境が生まれるのではないかという想いがありました。

要望が上がってくるということは、現場が困っているということ。基本的にはすべて実現したいと考えていたので、あとはどう実現するかに注力しました。

我々かGxP、どちらかが一方的に主張して進めるというのは違う。お互いに意見を出し合って進めるやり方を取ることで、お互いの強みを生かせたと思います。

安場(GxP):いただいた要望すべてに対応することは難しいので、優先順位をつけて進めました。力の掛け方を見極め、しっかり対応すべきところと一時的な対処で済ませるところを判断しながら、現場の業務フローを邪魔しないことを常に意識していました。

「システム=データを蓄積する箱」その先の価値創出へ

品質データを、現場と事業の競争力につなげていくために

河田様(J-オイルミルズ):今回できたシステムは、「品質データを蓄積する箱」だと捉えています。ここから先は、その蓄積されたデータ、すなわち『資産』をどう活用していくかが大きなテーマです。商品開発、トラブルの未然防止、生産条件の変更など、さまざまな場面でデータを活かし、競争力強化につなげていきたいと考えています。

西岡様(J-オイルミルズ):品質管理以外にも業務は多くあります。今回、現場の満足度も高い形で進められたと感じているので、このプロジェクトの良かった点をこれから進めるシステムプロジェクトにも広げ、会社全体の競争力拡大につなげていきたいです。

安場(GxP):今回構築したシステムで、品質データをしっかり蓄積できる基盤が整いました。ここからが本番だと思っています。これまでデータが散在していたり、集めようとすると膨大な手間がかかっていたりで、なかなか手を出せなかった分析や活用が、AIも組み合わせることで現実的な選択肢になってきています。そうした「今までできなかったこと」に一緒に踏み込んでいけるよう、積極的にご提案していきたいと考えています。

一方で、足元では現場からいただいている要望を一つひとつ丁寧に反映しながら、使いやすさを磨き続けることも同じくらい大切にしています。現場のフィードバックでシステムが育っていく流れを大切にしながら、最終的にはJ-オイルミルズさんのビジネスや、その先にいるお客様の利益につながる形で貢献していきたいと思っています。

さいごに.導入後の評価(各工場より、皆様の声)

今回、システムを導入し、実際にシステムをご利用いただいている各工場の皆様より実際のお声をいただくことができました。ぜひご覧ください。(順不同)

増井様(J-オイルミルズ/千葉工場)
試験成績報告書の作成作業について、作業負担が大きく軽減されたと実感しています。以前は、社内システムから紙へ出力した内容を元に再度手入力を行うなど、作業の重複が発生しており、確認や注意を要する工程となっていました。現在では、より効率的な運用が可能となり、お客様に安心してお渡しできる書類を作成できる環境が整ったと感じています。

三笘様(J-オイルミルズ/若松工場・リモート)
形になるまでは不安もありましたが、実際の運用を通じて使いやすさを感じています。これまでの若松工場は、主にExcelを使用して運用していたため、以前と比較し作業がとても効率的になりました。

大西様(J-オイルミルズ/神戸工場・リモート)
検討を通じて、工場ごとの運用上の差異を改めて認識し、統一できた点が良かったと感じています。一方で、設備上の制約により、神戸工場独自の Excel 管理が一部残る結果となりました。この点については、今後の改善課題として捉え、引き続き本プロジェクトで解決していきたいです。

福島様(J-オイルミルズ/静岡工場・リモート)
私自身、システム面に加えて現場業務に関する知識も浅い状態からのスタートであったため、打合せなど苦労する場面もありましたが、形のない段階から丁寧なコミュニケーションを重ねていただき、システムとして形にできたことに感銘を受けました。実際に運用を開始してからは、作業負荷の軽減に加え、データ管理面においてもこれまで以上に状況把握・運用できるようになった点は大きな成果だと考えています。

江川様(J-オイルミルズ/横浜工場)
横浜工場では、Excel + Access を使用した手作業の運用をとっていたため、安定運用に不安がありました。しかしながら、今回の取り組みにより、適切な形でデータを管理できる環境が整い、安心感を得ることができたと感じています。また、本プロジェクトを通じ、各工程に対して「本当に必要な作業か」という観点で業務を見直す機会となり、業務に対する姿勢にも変化が生まれたと感じています。情報が集約され、「ここを確認すれば状況を把握できる」という状態を実現できた点は大きな成果です。今後は、横浜工場独自の工程部分についても、より改善していきたいと考えています。